不動産投資 サラリーマンの簡単な説明
夢ではなかった。
そういうわけで、彼女が作った朝ご飯を食べて、私は銀河不動産へ出勤した。
非常に清々しい朝だった。
「どうも…」私も頭を下げた。
「ただいま」僅かに変化があった。
彼女は昼間のうちに買いものに出かけたらしい。
今までなかったものがキッチンに幾つかあった。
「歩いていったのですか?」私は尋ねた。
ここは山の上にあって、麓まで降りるだけでも十五分ほどかかる。
荷物を持って上ってくるのは大変だろう。
「そうですよ。
でも、大したことありません」「あの、車がありますから、必要なものは、私に言って下さい」「はい、お気遣いありがとうございます」彼女はこぐんと可愛らしく領く。
「Tさん、優しいのですね」「いや、その、心配をしているだけです」「父が言っておりました」「え、何をです?」「こんな部屋に住んでいるのだから、心の大きな方なのだと」「そうですか」。
私は領いてから、心が大きいというのは、どういう意味かを考えた。
「まえは狭いところでした。
べつに、ここに住んだあとも、変わりはありませんけれど」「あ、お布団も買いました。
明日届きます」。
布団、ああ、そうか、彼女が使う布団か。
え?では、やはり、ここに住むつもりなのか。
どうしたものか…。
またも、私の頭の中で対策委員会が開かれたが、すぐに夕食になったので、あっけなく解散になった。
ご飯を食べ終わったときに、彼女は私の横に来て、きちんと座った。
私は、湯呑みを戻し、鉢を硬くした。
いかん、何かあるぞこれは、と身構えたのだ。
「一つお願いがあります」じっと私を見据えて彼女は言う。
「はい、何でしょうか?」「下に置いてあるエレキギターを使わせてもらえないでしょうか?」「エレキギター?」突然の問いに、私は戸惑った。
そんなものがあることも忘れていたのだ。
以前に、Tさんというミュージシャンが送ってきたものである。
預かったのではない。
たしか、プレゼントだと聞いた。
つまり私のものだが、残念ながら私には無用の長物である。
部屋の右半分はまったく使っていない領域なので、そちらに放置したままだった。
「はい、ご自由に」私は答えた。
「アンプっていうんですか、あれのスイッチを入れたら、鳴りますよ。
「ありがとうございます。
とても素敵なギターです」
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